masashige iida
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ユリシーズ

2019年に映像作家の飯田将茂と、舞踏家の最上和子を中心に結成。プラネタリウムの暗闇に舞踏を投影するドーム映像作品『HIRUKO』の制作を皮切りに、舞踏と映像の組み合わせによる様々な作品を発表する。映像や撮影における視点を踊りを見ることの手掛かりとしながら、既存の身体表現のフレームに捉われることなく、踊りが成立する場の根拠と、芸術としての新たな社会性の創出に挑み続ける。「身体は人間に残された最後の土地」という最上和子の言葉をもとに、その内部の大海を旅する船をイメージして、2022年に団体名を新たにユリシーズと名付ける。


圧倒的な没入感 -ドーム映像の魅力-

ドーム映像とは、プラネタリウムなどのドーム状のスクリーンに投影される没入型映像のこと。プラネタリウムでは一般的に宇宙科学番組や自然ドキュメンタリーなどの上映が行われるが、昨今では全天を映像が覆う音楽イベントやパフォーマンスをはじめ、映像・アート作品の表現媒体としても注目されつつあり、世界各地でドームを使用した様々なイベントや映像祭が開催され、広がりを見せている。
ドーム映像は、映像表現であると同時に空間表現であるともいえる。その巨大な空間に包まれることで、これまでの映像では表現し得なかった没入感と臨場感を生み出し、観る者の鑑賞体験をより生々しい体験へと変えてくれる。飯田将茂はこの空間映像における新たな身体表現の可能性に着目する。映像という性質上、肉体の不在を前提とするにもかかわらず、ドームの暗闇に映し出される身体イメージは独特の存在感を獲得する。それはあたかも亡霊が出現するかのように、イメージと生身との間を揺れ動く。この空間映像は、これまでの映像表現ではその文法無しには語り得なかった身体性を、直接的に映像の中に発生させる可能性を秘めている。

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飯田 将茂 / Masashige Iida
映像作家。玉川大学芸術学部非常勤講師。国内外のプラネタリウムで身体性をテーマとした独自のアプローチによってドーム映像作品の発表を続ける。国外の主要なドーム映像祭にて、日本人初の最優秀賞を受賞。


蠱惑的な世界を生み出す -原初舞踏-

舞踏とは何か......それは自身の身体と向き合うことにより、身体の内部深くから溢れてくるものを動きにしていくこと。
それを突き詰める程に、その取り組みは個人を越えた大地の持つ無意識の領域や、生命の歴史に関わって行くこととなる。それは人類の歴史上、古代の人々が持っていたアニミズムなどの原初性を実現することに他ならない。
最上和子の目指す舞踏は、高度なAIやITまたはIoTの登場により、これからますます希薄になっていくであろう人間の身体性をいかに今の時代にふさわしい形で獲得していけるのかを模索している。
それと同時に、日本発祥の舞踏の遺産を引き継ぎつつも、それを更に深め人間の持つ可能性を新たに引き出していく取り組みである。本作「HIRUKO」においては、“身体性を映像の中に顕現させる”という飯田監督の構想を可能にするために欠かせないものとしてその役割を担っている。

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最上 和子 / Kazuko Mogami
原初舞踏家。バルハラ稽古場主催。原初舞踏を提唱し『身体』の探求と模索を行い続ける舞踏家。公演・ワークショップ・東京巡礼などの活動をする一方で実践家の立場からの身体論を構築。執筆も手掛ける。






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